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横浜地方裁判所 昭和50年(わ)1999号 判決

労働組合職員(郵政事務官)

甲野一郎

労働組合職員(郵政事務官)

乙原二郎

労働組合職員(郵政事務官)

丙山三郎

労働組合職員(郵政事務官)

丁川四郎

労働組合職員(郵政事務官)

戊岡五郎

会社員(郵政事務官)

己林六郎

労働組合職員(郵政事務官)

庚森七郎

右者らに対する逮捕監禁、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反、傷害各被告事件について、当裁判所は、検察官廣瀬哲彦、弁護人秋山泰雄、山本博、中村清、伊藤幹郎、岡田尚各出席の上審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人七名は全員無罪。

理由

〔Ⅰ〕 公訴事実

被告人七名は、ほか十数名と共謀のうえ

第一  昭和五〇年一一月四日午後七時五分ころ、横浜市西区高島二丁目一四番二号横浜中央郵便局第二保険課事務室において、佐藤理八(当四八年)の両腕をつかんで引っぱり、両脇及び腰部付近を抱えるようにして引きずるなどして無理矢理に同郵便局内全逓信労働組合横浜中央支部書記局内に連れ込み、同室出入口の扉に施錠し、同人を取り囲んで監視し、翌五日午前一時二一分ころまでの間、同人をして同室からの脱出を不能ならしめ、もって同人を不法に逮捕監禁し(逮捕監禁罪)

第二  同月四日午後七時一三分ころから翌五日午前一時二一分ころまでの間、同室において、同人に対し、こもごも「立ち聞きをしていたな。白状してしまえ」、「袋叩きにする」、「ロープで首つりだ」、「腕をへし折るぞ」、「本当に殴るということを教えてやる」などと怒号して、同人の生命・身体に危害を加えることを告知し、もって数人共同して脅迫するとともに、同人のえり首をつかんでゆさぶり、頭部をスチール製ロッカーに打ち当て、顎を小突き上げ、腹部を手拳で突くなどの暴行を加え、よって右暴行により同人に加療約二週間を要する頭頸外傷等の傷害を負わせ(暴力行為等処罰ニ関スル法律違反罪及び傷害罪)

たものである。

〔Ⅱ〕 当裁判所の判断

(その一) 事実関係についての判断

(甲)  事実関係

第一被告人ら及び佐藤理八の行動

(証拠略)を総合すると、以下の事実を認定することができる。

一  本件事件の生じた現場は、横浜市西区高島二丁目一四番二号横浜中央郵便局三階に所在し、同階は東側職員通用階段及び西側から二ないし四階に通じる階段に接している建物のほぼ中央部を東側から西側に幅約一・九米、長さ約二五・七米の廊下があり、保険課はこの中央廊下の南側に位置し、間口約三〇米、奥行約一〇・四五米の室内は、その東側に第一保険課、その西側に第二保険課が位置し、両者の仕切りは、部屋のほぼ中央に、長さ約一・五米、幅約〇・四五米の木製テーブルによるのみで、特に区画の表示はなぐ、第二保険課長席は建物南側窓より約一・八三米内側で、ほぼ第二保険課の中央部に、同保険課出入口に正対して位置し、スチール製両袖机、スチール製袖机各一個が置かれ、同保険課長席右側約〇・一九米の通路をへだてて南側窓より約一・九一米に第二保険課長代理席として、スチール製片袖机、スチール製テーブル各一個が置かれ、その他の部分には職員の事務机が配置されており、第一保険課入口ドアは、右第二保険課長席の東北方向に向け約二〇・七二米の距離の所にあって、内側に開閉できる幅約一・六七米の観音開きであり、また、中央廊下の東側つき当りに全逓信労働組合横浜中央支部書記局が位置し、右第一保険課の出入口東端より約二米ほどの距離をへて同書記局出入口があり、同出入口ドアは幅約一・八米、高さ約二・一米の同室内側に開閉できる観音開きであり、ドアのノブにはシリンダー錠が設けられており、同書記局は幅、奥行共約五・四米の広さをもち、室内は周囲に奥行約〇・三米程のロッカー、食器棚、机、本棚等で囲まれ、室内中央部には高さ約〇・七四米、長さ約一・五米、幅約〇・七三米の木製机六個が「コ」の字型に配置されており、さらに書記局出入口から約一五・六米西側の中央廊下北側に男子用便所が存在し、同所出入口は右開きで内側に開閉する木製扉であって、向って左側に奥から約一・五六米の幅の間に二個の陶器製小便用便器が並び、その手前幅約一・八九米の間に二個の洗面器が取付けられている(別紙〈略〉第一、第二図面参照)。

二(一)  本件の生じた昭和五〇年一一月四日当時、被告らはいずれも郵政事務官であって、被告人甲野一郎は全逓信労働組合(以下、単に全逓と略称する)神奈川地区本部横浜中央支部(以下、単に横浜中央支部ないし支部と略称する)の支部長、被告人乙原二郎は同支部の副支部長、被告人丙山三郎は同支部の書記長、被告人庚森七郎、同戊岡五郎、同己林六郎、同丁川四郎は同支部の各執行委員であった。

(二)  本件当時全逓は、いわゆるスト権奪還ストライキを控えて、昭和五〇年七月の全国大会で、全国的に組織拡大行動を起こすことを決議し、これを受けて横浜中央支部は、昭和五〇年一一月四日午後五時から、まず同郵便局の第一、第二保険課の全逓未加入者に対し、組合員を動員して、全逓加入の説得行動を行うこととした。

同日午後五時すぎころ、支部副支部長の被告人乙原二郎及び支部執行委員の同丁川四郎は、他の組合員四、五〇名と共に第一、第二保険課事務室に入ったが、第一保険課長の佐藤理八から、勤務時間中であるからやめるように注意され、午後五時一五分に規程上の勤務時間が終了した後、第一保険課の組合未加入者である海老塚憲司の席を取り囲み、同人に対して全逓に加入するよう説得した。しかし同人はそれらに何ら答えることがなかったため、組合員らは机をたたくなどして説得活動を続けた。その間横浜中央郵便局の管理者側では、組合員が保険課に入室した後、約五〇名ほどが第一、第二保険課事務室に集まり、その状況をメモするなどしていたが、右管理者の一人であり、また、海老塚憲司の直属の上司である佐藤理八は、組合員の説得に対し、組合員の間に入って海老塚憲司の所に近寄り、同人に「自分の意見をはっきり言いなさい。帰るなら帰ると言いなさい」などと言った。結局海老塚憲司は、組合員の説得に対し終始黙したままであったため、午後六時ころ、被告人丁川四郎は、組合員に対し、「きょうはこれで帰る」と解散を指示し、組合員らは第一保険課事務室から引き上げた。

(三)  同年一一月四日午後六時より、前記書記局において、全逓横浜中央支部執行委員会が、被告人七名を含め約二〇名の組合員の出席のもとで、組合のストライキ権奪還闘争問題、組織拡大問題、教宣活動等を議題として開催され、支部長らの情勢報告の後、被告人戊岡五郎が発言していた同日午後七時ころ、被告人庚森七郎が三階の前記男子用便所に隣接する女子用便所横の自動販売機よりコーヒーを購入するため、席を外して書記局を出ようとし、同書記局出入口のドアを手前に引いたところ、同ドア約一米位のすぐ直前に、横向きに立ち、首を垂れるような格好でいる同郵便局第一保険課長佐藤理八と目が合った。そこで同被告人が佐藤理八に対し、「何してるんだ」と咎めると、同人はばつが悪そうに腰をかがめ、何かを拾うような格好をして、「何もしていないよ」と言いながら、前記男子用便所の方へ立ち去ろうとした。同被告人は直ぐ後を追い、「ちょっと待て。お前そこで何してたんだ。立ち聞きしてたのか」と詰問すると、「いやトイレに来ただけだ」という返事なので、同被告人は、そのまま同人と共に同便所へついて入りなおも詰問したが、佐藤理八は返事をしないまま奥側の小便用便器へ立ち、用を足す格好をした後、同被告人を押しのけて同便所出入口より第一保険課に急ぎ足で戻った。

(四)  同被告人はコーヒーを購入してから、同日午後七時五分ころ書記局に戻り、執行委員会の発言を中断させて、「ちょっといい、聞いてくれる。今、一保課長が立ち聞きしてたよ」と報告し、さらに事態を説明しようとしたが、被告人乙原二郎が直ちに、「けしからん、行ってくる」と席を立ち、続いて被告人甲野一郎、同丙山三郎、同庚森七郎、同丁川四郎、同戊岡五郎ら書記局の中にいた組合員も次々に席を立ち、書記局を出て第一保険課事務室に入った。しかし佐藤理八は同保険課長席にはおらず、第二保険課長代理席に坐って第二保険課長の川島久夫と話をしていたので、被告人ら組合員は佐藤理八の許に近寄り、同人を取り囲んで、こもごも「立ち聞きしていたな。何聞いていたんだ、はっきり言え。不当労働行為じゃないか」等とその場で約七、八分間問いただしたが、同人は、「トイレに行って来ただけだ」と応答するのみであったので、同日午後七時一三分ころ、被告人甲野一郎において、「書記局へ来なさい」と言って佐藤理八の左腕を組み、被告人丙山三郎がその右腕を組んで、第二保険課事務室から書記局へ連れて入り、その他の組合員もそれに続いて書記局へ入った。その際佐藤理八は、盗聴の現場を目撃されたことに対し、後ろめたさもあり、また自らも何とか弁明をはかろうと考えていたこともあって、被告人甲野一郎の「書記局へ来なさい」との言葉に、自らの意思で書記局に同行することに応じた。

この時、同郵便局二階で物音を聞きつけて上って来た同郵便局庶務課長伊奈正夫は、前記川島久夫から、佐藤理八が書記局に連れこまれた旨を聞くや、直ちに、半開きになった書記局出入口のドアのノブに手をかけ、ドアの下部に足を入れてドアを開けようとし、続いて同郵便局庶務課長代理の眞間昭三らもドアを開けようとしたが、書記局の中から強い力でドアを閉められ、伊奈正夫が足の先をはさまれたので、同人がようやくの思いで足をはずしたところドアが閉まり、さらに中から施錠がなされた。

(五)  書記局では、同室左側奥の謄写版横付近に佐藤理八を坐らせ、その周囲に被告人乙原二郎、同丙山三郎、同庚森七郎が坐り、被告人甲野一郎は同室奥スチール製本棚前付近にこれを背にして坐り、佐藤理八に対して主として組合の支部三役(支部長、副支部長、書記長)が中心となり、「何を立ち聞きしていたんだ。不当労働行為じゃないか」等と追及したところ、同人は当初「トイレに行っただけだ。何もしていない」と繰り返し弁解していたが、被告人甲野一郎において、「そこにあるロッカーの扉をドアに見たてて実演してみろ」と言って、第一保険課出入口を出る時の格好をさせたところ、佐藤理八は立ち上り、書記局左奥のスチール製ロッカーの扉を第一保険課のドアに見立て、廊下へ出る動作をしたが、同人の動作では書記局の方向を見ずに便所の方向へ身体が向く結果となり、被告人庚森七郎が現認していた動作と全く相反することとなり、同被告人が、「私が書記局のドアを開けたときに、あんたと目が合ったじゃないか。あんたは中腰の格好をしてごみを拾うようにしてトイレの方に逃げたじゃないか」と追及すると、同人は、「いや、私は猫背なのでそういう風に見えたかも知れない」と弁解し、さらに、「あんたが自然に保険課を出ればトイレの方に身体が向くじゃないか。それなのに何で書記局の方を見てなければいけないのか」という問いに対しては、「私は保険課を出る時に書記局を見る癖がある」と弁解するなどしたので、被告人らは同人の不自然な供述内容ないしそのしょう然とした態度を見てとり、佐藤理八が執行委員会を盗聴したことは間違いないとの確信を持ち、同日午後七時五〇分ころ、被告人丙山三郎において同郵便局次長梶田勝二に「佐藤が盗聴したことを認めた。あんたがやらしたのか。不当労働行為じゃないか。どう責任をとってくれるんだ」と電話し、続いて佐藤理八と電話を代わったところ、同人はしばらくは「はい、はい」と答えていたが、他は一切喋らず、「はい、分りました」と言って電話を切った。

(六)  ところが、電話を切った後、佐藤理八の態度は急変し、被告人甲野一郎において「さあ、謝って貰おう」と要求するも、佐藤理八はこれを拒絶し、「あんた誤解されるようなことがあったかも知れないと言ったじゃないか」「いや、そういう意味で言ったんじゃない」等と押し問答となり、同室にいあわせた他の組合員達も「何を言うんだ」「おかしいそ」等と喧噪になり、被告人甲野一郎は佐藤理八の左肩に手を置き、「あんた最前言ったことを言わないって言うのか」などと言って、同人の肩をもってゆさぶり、同乙原二郎も同様に佐藤理八の肩に手を置いてゆさぶり、また同丁川四郎は佐藤理八の肩に手をかけて、それぞれ追及し、さらに同丙山三郎において、「あんたメモしているものを持っているんじゃないか。持ち物を出してみろ」と要求し、被告人甲野一郎において、ワラ半紙を出して、「自分の言ったことを書きなさい」と要求した。

(七)  午後八時すぎころ、佐藤理八は、内ポケットから封筒を出して、「これを今日中にお客に届けなければいけないので、帰してくれ」と要求したが、被告人甲野一郎が、「これからお客さんのところへ行けば九時を過ぎちゃう。明日だっていいんじゃないか」と言うと佐藤理八は、「そうですか」と言って封筒をしまった。

三(一)  同日午後八時四五分ころ、本件について全逓関東地方本部から連絡を受けた同神奈川地区本部執行委員市川武男が書記局へ着き、まず被告人甲野一郎から事態の報告を聞いた後、約三〇分ないし四〇分間佐藤理八を問いただしたが、佐藤理八は依然として「トイレへ行っただけだ」というばかりで、次長との電話後急変した態度を変えないので、被告人らはさらに同人を追及したが、その際、同日午後九時三〇分ころ、被告人戊岡五郎は、「ロープで首つりだ」と、また同乙原二郎は、「腕をへし折るぞ」「ひっぱたけや」と、また同丙山三郎は、「袋だたきにしろ」といずれも同人に申し向けた。市川武男は、佐藤理八が盗聴したという確信を抱いたので、午後一〇時ころ、全逓神奈川地区本部青年部長の島田幸夫を伴い、同郵便局局長室において江原局長と盗聴問題についての交渉を開始した。

(二)  右交渉の間、書記局の中の被告人らは市川武男の指示によりそのまま待機していたところ、同日午後一〇時三〇分ころ、佐藤理八より、小用を足したい旨の申し入れがあり、組合員は、「バケツにしろよ」「ゴムでいわいちゃえ」などと言ったが、佐藤理八が、用を足した後は書記局へ戻ることを承諾したので、その申し入れをいれることとなり、午後一〇時四〇分ころ、同人が書記局前廊下等にいる管理者に向って、ラウドスピーカーで、「これから便所に行きます。便所に行ったら戻ります」と言ったあと、被告人丙山三郎が外の管理者に向って、「これから手洗いに行くから手を出すな」と言ったところ、庶務課長伊奈正夫から手は出さない旨の返答があり、続いて書記局内から組合員が約二〇名出てきて、同廊下に書記局入口から三階エレベーターのある踊り場付近まで二列になって手を組んで並び、その列の間を、佐藤理八が被告人甲野一郎の先導で三階便所へ行って用を足し、同じ状態で再び書記局へ戻った。

この際同廊下や保険課の部屋には管理者が約五〇名いたが、その時組合と局長とが交渉中であり、その交渉の結果を待ち、それまでは無用の混乱をさけるという意味から、あえて実力で佐藤理八を救出するという考えはなく、また佐藤理八も同様の意味から、書記局に戻るよう約し、用を足した後再び書記局に戻った。

(三)  市川武男らが局長室へ交渉に出向いている同日午後一一時前ころからは、組合青年部の常任委員の者も他の会合を終えて書記局へ入って来たり、同室内の組合員らにおいても、便所へ行く者、煙草を購入する者、ラーメンを食べに行く者等同室の出入りは繁しくなっていた。

(四)  組合と局長との交渉は同日午後一〇時ころから、計三回もたれたが、結局翌五日午前一時一五分ころ決裂したので、市川武男及び被告人甲野一郎は書記局に戻り、同日午前一時二〇分ころ、佐藤理八に対し帰るよう促し、同人は書記局を出て行った。

四(一)  この結果、一一月四日の支部執行委員会は中止となったが、翌五日午後六時より右委員会が開催された。

(二)  同日被告人丙山三郎から盗聴問題についての交渉を当局へ申し入れたが、当局はこれに応じなかった。

第二当局側の対応及び局長と組合との交渉状況

(証拠略)を総合すると、以下の事実を認定することができる。

一(一)  横浜中央郵便局局長江原進は、昭和五〇年一一月四日午後七時一五分ころ、横浜中央郵便局の労務担当主事から書記局における事態の報告をうけ、直ちに同郵便局の管理者に対し、三階に集合するよう招集すると共に、午後七時二二分ころ、同郵便局駐在の河合労務連絡官に事態を連絡した。

(二)  関東郵政局(以下郵政局と略称)人事部管理課長守谷勝重は、同日午後七時二〇分すぎころ同郵便局駐在の河合労務連絡官から、事態発生の連絡をうけ、午後七時三〇分ころ、全逓関東地方本部に佐藤課長を直ちに釈放するよう申し入れた後、午後七時四五分ころ江原局長に対し、佐藤課長を釈放することを甲野支部長に申し入れるよう指示した。その後、午後八時前ころ、同郵便局から、第一保険課長が便所へ行き書記局の前を通って保険課室に帰り、管理者の間で話をしていたら、組合員が大勢来て第一保険課長を書記局へ連れ去った、組合側では書記局内の出来事を盗聴していたと言っているけれども、そういうことはなかった旨の報告があり、守谷管理課長としても、盗聴などあるはずがないと考えていた。

(三)  郵政局から前記釈放の申し入れをするよう指示をうけた江原局長は、同日午後七時五〇分ころ、書記局の被告人甲野一郎に対し、「一保課長を返してほしい」と電話したが、同人から「盗聴は局長がやらしたのか。不当労働行為ではないか」などと抗議され、右申し入れを拒絶された。

(四)  さらに同日午後八時八分ころ、郵政局人事部管理課課長補佐松本亨から再び釈放を申し入れるよう指示があり、また守谷管理課長は午後八時一二分ころ、再度、江原局長に対し、「話があればあとで聞く。とにかく釈放することが先だから、その趣旨でもう一度申し入れするよう」指示したので、同局長は、再び被告人甲野一郎に、「もうかれこれ一時間になる。従ってこれは大変なことになるんだから、すみやかに返してほしい」旨申し入れたがやはり断わられた。

(五)  その後、同日午後八時三〇分ころ、郵政局から江原局長に対し、「地区本部から支部に対して事態の収拾を図るように指示があったようだ。誰か行くだろうから、しばらくの間待っていなさい」との指示があり、その後江原局長は、全逓神奈川地区本部の市川武男執行委員が来局したことを郵政局に報告したが、さらに午後九時前ころ、再び郵政局から、「市川君が行ったのであればそれで中の書記局内を説得するであろうから、その間しばらく様子を見ているように」との指示があり、また午後九時二四分ころに、「市川執行委員が行ってだめなら、機動隊の要請をせざるをえない」旨を、午後九時四〇分ころ、「どうしてもだめなら郵政局で指示するから一一〇番するように。そうすれば現行犯逮捕になる」旨のそれぞれ指示がなされたので江原局長は、梶田次長、河合労務連絡官らと、警官の出動要請についての打合せをした。

(六)  その間、全逓関東地方本部では、郵政局から事態発生の連絡をうけた後、同日午後八時ころ、市川武男執行委員に対し、すぐ横浜中央郵便局に行き、事態解決の交渉にかかるよう命じ、さらに同本部は、午後八時二〇分ころ、郵政局に交渉のため役員を派遣した旨を連絡した。指示をうけた市川武男は、直ちに電話で書記局に対し、すぐに行くから待機しているように言った後書記局に向かった。

(七)  市川武男執行委員は、同日午後八時四五分ころ、書記局に到着し、被告人甲野一郎らから、佐藤理八がどういう形で盗聴していたのか、それを誰が目撃したのかなどを中心にして一〇分から一五分くらい報告をうけた後、自ら佐藤理八に対し、事実の経過を問いただすとともに同人の弁解を聞き、佐藤理八が盗聴したという心証をもった。

そこで、市川武男は、江原局長と交渉したうえでこの問題の処理をはかろうと考え、同日午後一〇時ころ、書記局の支部三役に対し、「局長と交渉してくるからその間待機していろ」との旨を伝えて、書記局に来ていた全逓神奈川地区本部島田幸夫青年部長とともに局長室に赴いた。

二(一)  同日午後一〇時〇六分ころから、横浜中央郵便局局長室において、江原進局長、梶田勝二次長と市川武男執行委員、島田幸夫青年部長の間で、事態解決のための第一回交渉が開始された。同席上で、市川武男は、江原局長に対し、事実の経過と二人の目撃者の存在を説明したが、局長は、「常日ごろから不当労働行為ないしはそれめいたことは極力避けろと指示しているのでそんなはずはない。私は佐藤君がそんな馬鹿なことをするはずがないと信じている」と言明したので、市川武男は、〈1〉後日本件について支部と交渉をもつこと、〈2〉局長が指導責任者として盗聴問題について謝罪すること、の解決案を示したが、局長は〈1〉の点については応じたが、〈2〉の点は拒否した。そこで市川武男は、「局長もその場にいなかったのだから、盗聴がないとも言いきれないのではないか」と問うと「そのとおりだ」との答えだったので、さらに「もし盗聴ということがあったとしたらどうか」と問うと、「そんなことはあってはいけないことだ」と答えるので、同人は、「仮りに盗聴がなされたとしたら遺憾であったとしてはどうか」と修正案を示したところ、局長は賛意を表明したので、同人は、「支部の三役を呼ぶから、局長の方からさっきの二点について直接回答してくれ」と言うと、局長は、「ちょっと待ってくれ。郵政局に相談してくる」と言って立上り、郵政局に指示を仰いだ。その結果郵政局から断わるようにとの指示があったため、市川武男に対し、「さきほど約束した点は駄目だと言われたので、勘弁してくれ」と告げたので、同人は、「いちいち郵政局に聞かなければいけないのか」と言って席を立って書記局に戻ってしまい、結局午後一〇時四〇分ころ、第一回目の交渉は決裂した。

(二)  江原局長は、第一回目の交渉の状況を郵政局に報告し、同日午後一〇時五〇分ころ、梶田次長に命じて、河合労務連絡官とともに出動要請書を持って戸部警察署に向かわせた。梶田次長は、同日午後九時ころ、戸部警察署に電話で状況を伝えていた。同人らは同署で、「管理者も大勢いることだから自分で努力してくれ」と言われたので梶田次長は同署にとどまり、翌五日午前〇時すぎころ帰局した。

(三)  書記局へ戻った市川武男は、支部役員らに交渉の経過を報告したが、全逓関東地方本部から、さらに交渉を続行するようにとの指示があったので、一一月四日午後一一時すぎころ再び局長室へ赴き、江原局長に対し、「前回の交渉の〈2〉の点については局長との間では合意をみているんだから、言いまわしを任すから、支部三役と会ってわかるように言ってくれ」と申し入れたところ、局長から、支部三役と会うことの了解を得たので、市川武男は再び書記局へ支部三役を呼びに戻った。

(四)  同日午後一一時一一分ころ、市川武男は、支部三役である被告人甲野一郎支部長、角田菊雄副支部長、被告人乙原二郎副支部長、同丙山三郎支部書記長を同道し、局長室において、局長との間で第二回目の交渉を開始した。しかしその際江原局長は、「後日この問題について誠意をもって話し合うから、佐藤一保課長を返してくれ」と言うのみで、先ほどの修正案には触れなかった。そこで市川武男は、局長との間で合意をみた点についてはどうなのかと追及すると、江原局長は黙ってしまったので、江原局長から遺憾の意が表明されるものと思ってやってきた右被告人らは、「約束が違う」と怒り出し、角田菊雄、被告人乙原二郎、同丙山三郎は、午後一一時二五分ころ、席を立って同所から出て行ってしまった。残った市川武男、被告人甲野一郎らは江原局長が前記修正案について合意が成立しながら、約束違反をしているとして追及したが、江原局長は依然拒否の態度を変えないため、結局第二回目の交渉も、午後一一時五二分ころ決裂してしまった。

(五)  江原局長は、右第二回目の交渉後、その状況を郵政局に報告したところ、同日午後一一時五五分ころ、郵政局から、早く警察に対する出動要請をせよとの指示があり、さらに翌五日午前〇時一八分ころ、すみやかに出動要請をせよとの指示がなされた。

(六)  他方書記局では、第二回目の交渉において進展がはかれず、さらに一一月四日午後一〇時すぎころ、就労命令を出されている組合員の組合休暇延長許可の問題もあったので、翌五日午前〇時二〇分ころ、市川武男及び支部三役の五名は再び局長室において江原局長との第二回目の交渉に入り、前記〈1〉の点は、明日この問題を交渉すること、〈2〉の点についてはさらに組合側が譲歩して、一般論として盗聴はよくないということについて局長が触れること、また〈3〉就労命令の出ている三名について組合休暇の延長を認めることの三点を提案したが、江原局長は〈1〉の点は同意したものの、〈2〉の点は一般論としても拒否し、〈3〉の点はその場で郵政局に聞いたところ認めない旨の回答があったのでこれも拒否した。

そして交渉中の同日午前一時一〇分すぎころ、郵政局より、「話し合っていたのでは警察官の出動要請ができない。交渉を打ち切れ」との指示があり、局長はこれを受けて、「これで交渉は打ち切りだ。あとは強硬手段をとる」と通告し、かくて第三回目の交渉も午前一時一五分ころ、最終的に決裂した。

(七)  江原局長は、右交渉決裂後、直ちに戸部警察署に対し出動要請をするべく同署へ電話をしたが、その電話中、佐藤理八が書記局から出たとの連絡があったので、電話を切った。

(乙) 証拠の評価(略)

(その二) 法的評価

第一本件公訴事実についての検討

一  逮捕罪(第一公訴事実)について

まず被告人七名に対する逮捕罪の成立について判断するに、逮捕罪とは、人の身体的行動の自由を侵害する罪であり、その方法は物理的方法(客観的側面)によるとその他心理的方法(主観的側面)によるを問わず、多少の時間的継続を伴う身体の拘束が認められればその構成要件を充足するものである。しかるに、本件で問題となる被告人甲野一郎及び同丙山三郎の行為は前記認定のとおり、佐藤理八の左右の腕をそれぞれが組んだまま、第二保険課事務室から書記局まで歩いて行ったというものであり、その際佐藤理八は、盗聴の現場を目撃されたことに対し後ろめたさもあり、また自らも何とか弁明をはかろうと考えていたこともあって、被告人甲野一郎の「書記局へ来なさい」との言葉に、自らの意思で抵抗することなく書記局に同行することに応じたものと認められるのであるから、そのような事情の下では、右の被告人甲野一郎及び同丙山三郎の行為が物理的、心理的のいずれの点でも佐藤理八の身体的自由を拘束したといい得ない。

二  監禁罪(第一公訴事実)について

(一)  監禁罪とは人をして一定の区域外に出るごとを不可能又は著しく困難ならしめることをいうが、右不可能ないし困難ならしめる障害については逮捕罪同様、客観的側面及び主観的側面の両面から考察する必要がある。

(二)  主観的側面

(1) 書記局へ入った佐藤理八は、被告人らによる盗聴行為の追及に対し、動作をまじえながらなんとか弁解にこれつとめていたものであり、就中同人は、右事態解決のため同人が当局側と交渉中も他の組合員の出入りが多い中を組合員同様に同室で待機しており、同人から書記局より出たい旨の意思の表明は、午後八時一〇分ころ届け物があるから帰らしてもらいたい旨申し入れたことと、午後一〇時三〇分ころ小用をしたいと申し出たことの二点以外はなく、前者は被告人甲野一郎より断わられたためさして強い抗議もせず右要求を引っ込めており、後者についても、用を足した後は戻ることを了承していたものであるから、困惑しながらも無理な退去は出来ないと自ら考え、加えて盗聴行為の疑いをかけられているという後ろめたさからその弁解に終始したことが認められる。

(2) 佐藤理八が書記局内に入ってから後の当局側と全逓側との交渉の経過は、既に事実関係の項で述べたとおりであるが、書記局の中にいた佐藤理八も、本件盗聴問題についての右交渉のなされていることを知っていたと認められるところ、同人としては本件盗聴問題についての当局と組合との交渉の結果を待ち、それまでは無用の混乱を避けようとの意思で書記局内に待機し、平穏裡に事態の解決がなされることをそれなりに期待していたものとみられる。

以上によれば、本件において佐藤理八が主観的側面において、書記局から外へ出ることを不可能又は著しく困難ならしめたとの事実は認めることはできないというべきである。

(三)  客観的側面について

(1) 書記局ドアの鍵は、佐藤理八が書記局へ入った直後ころ施錠されたことは認められるが、その後施錠が継続していたことを認めるに足りる証拠はない。

(2) 同ドア出入口には組合員渡辺良一が監視役としていたことは事実であるが、その目的が佐藤理八の脱出を妨げるものであったかどうかは疑わしく、むしろ他の管理者達が書記局へ侵入して混乱することを防ぐためのものであった蓋然性の方が大きい。

(3) 佐藤理八が小用のため、一時同室を出た際、被告人甲野一郎が先導し、廊下に組合員を並ばせた事実も右と同様、混乱を防止する為に行なわれた整理であって、佐藤理八自身書記局へ戻ることは受容していた。

(4) 書記局内には組合員が二〇名ほどいたとしても、多くの組合員は同日開催された組合執行委員会に参加すべく集ってきた者等であって、偶々右盗聴問題が生じ執行委員会が中止の憂き目にあったため、同室内にめいめいがその席に坐っていたというだけのことであり、終始佐藤理八を取り囲んでいたという証拠はなく、ことさら同人を同室よりの出入りを不自由にする状態に置いたものということもできない。

(5) さらに注視すべきは、被告人らの書記局内での佐藤理八に対する追及は、同室に入った午後七時一三分ころから約五〇分の間であり、また市川武男執行委員がこれを追及したのは午後八時四五分ころから午後一〇時近くまでのことであり、その間及びその後は被告人ら及び佐藤理八にとっては、事態解決のための待機時間というべく、その間組合員らの同室からの出入は自由になされていたとみられる。

(6) 右待機時間については、当局側との交渉では、当初、江原局長において円満解決の意向を示したものの、遂には当局側がかたくなに佐藤理八を釈放せよとの一点張りで、事案の真相を解明しようとはせず、組合側の解決案の再度の譲歩にも応じなかったから、その交渉が翌五日午前一時すぎまで続いたとみるべきであり、また通常労使の交渉としても時の経過が長びくことはあり得るのであって、このことは佐藤理八としても当然予測できたというべく、その自然の時の流れを以て、長時間同人を書記局へ留め置いたとして被告人らに帰責するということは到底できない。

(四)  以上(二)(三)によれば、結局佐藤理八が書記局より廊下に出て脱出することが不可能又は著しく困難にする主観的、客観的障害はいずれもこれを認めることができないのである。

(五)  被告人ら組合員の監禁の故意

被告人らは、第二保険課室で事の究明することは、他の管理者達の参集と妨害により混乱を生じさせると考え、佐藤理八を書記局へ同行したものであり、また被告人らは、佐藤理八が書記局に入ってからは、執行委員会を中止してまでも、終始盗聴行為の追及に費しており、また前記のとおり、同日午後八時ころ、神奈川地区本部の市川執行委員から組合員に対し、書記局に待機するようにとの指示があり、組合員は、市川執行委員が交渉に入った後も、書記局内で、交渉成立まで待機の態度をとっていたもので、被告人らには右事態解決をさしおいて佐藤理八を書記局に留め置こうとする意図は全くなかったというべきである。

右の点からすれば、佐藤理八が書記局に入って以降外に出るまでの間、被告人ら組合員において、佐藤理八を監禁するという故意も認めることはできないというべきである。

三  第二公訴事実について

(一)  既に述べたとおり、本件第二公訴事実のうち被告人らが佐藤理八に対し傷害を与えたことを認めるに足りる証拠はない。

(二)  右公訴事実中の暴行、脅迫については、被告人らが書記局において佐藤理八に対して行った行為は前記の「事実関係」のとおりであって、被告人甲野一郎及び同乙原二郎がいずれも佐藤理八の肩に手をおいてゆさぶった行為は暴行に、同戊岡五郎、同乙原二郎、同丙山三郎が前記の文言を申し向けた行為は脅迫にそれぞれ該当するというべきであるが、右行為の目的は同人の盗聴行為の有無の確認にあり、被告人らの意思の疎通は右の点について認められるけれども、右暴行、脅迫についての共謀並びに共同行為はこれを認めるに足りないことは既に述べたとおりである。結局、右の通り、被告人甲野一郎及び同乙原二郎の各暴行と被告人戊岡五郎、同乙原二郎、同丙山三郎の前記各脅迫がそれぞれ独自に認められるにすぎない。

第二違法性の阻却について

一  およそ行為の違法性はこれを実質的に理解し、社会共同生活の秩序と社会正義の理念に照し、その行為が法律秩序の精神に違反するかどうかの見地から評価すべきものであって、若し右行為が健全な社会通念に照し、その動機目的において正当であり、そのための手段として相当とされ、又その内容においても行為により保護しようとする法益と行為の結果侵害さるべき法益を対比して均衡を失わない等相当と認められ、行為全体として社会共同生活の秩序と社会正義の理念に適応し法律秩序の精神に照して是認できる限りは、たとえ正当防衛、緊急避難、ないし自救行為の要件を充さない場合であっても、行為の形式的違法の推定は破られ、犯罪の成立を阻却されるものと解するのが相当であって、その根拠は刑法第三五条にこれを求めるのが相当である。

二  本件についてこれをみるに、本件は、全逓信労働組合と横浜中央郵便局とのいわば労使関係をめぐる紛議であるということができるところ、労働者は本来憲法上の団結権等の権利(憲法第二八条)を持ち、労使対等の立場からその経済的地位の向上を図るべきところ、この労働法規範のもつ性質は右行為の動機目的の正当性、手段の相当性、法益均衡の凡ゆる点について具体的現実的な場を通して考慮すること、即ち市民刑法規範に労働法規範の持つ意味を綜合して判断することを要し、そうすることによって初めて行為が社会共同生活の秩序、社会正義の理念に適合し、全法律秩序に照らして是認できるかどうかの判断が可能となるというべきであるが、ことに本件では、本件の被告人らの行為の契機は、組合がいわゆるスト権奪還ストを控えてその対策等を討議していた際、この内容が管理者側の一人に盗聴されたとの疑惑が生じ、その管理者に盗聴の有無、盗聴の内容等を聞きただそうとの点にあったものであり、労働組合において、いわゆる労使対等の原則を貫くためには、常に強固な団結力を維持することが不可欠の要件であることはいうまでもなく、とりわけ、本件で盗聴されたとの疑いの生じたのは、組合にとって重要な意思決定機関である支部執行委員会であって、これを盗聴して得た情報を当局側が労務政策上さまざまに利用することになれば、組合役員の組合員に対する信頼を損うのみならず、ひいてはその団結力を弱める結果となることが十分に想起できるものである。

三  右観点からさらに本件を具体的にみれば、本件事件は全逓横浜中央支部執行委員会の開催中、書記局出入口直近で、同局の管理者側の一人である佐藤理八がそば耳を立てて盗聴していたのを現認した旨の被告人庚森七郎の報告に基き、被告人らにおいて同人を書記局に同行し、同人を追及して真相の究明をはかろうとしたものであり、既に見たとおり、被告人甲野一郎、同乙原二郎の前述の暴行は、全体として被告人らの佐藤理八に対する右盗聴行為の追及という正当な目的の為に行われている際に、同人が一応これを認めざるを得ない状態に陥いった後、局長(ママ)からの電話を受けて態度を急変させた直後に、それを非難、追及する意味でなされており、また被告人戊岡五郎、同乙原二郎、同丙山三郎の前記発言行為は、一旦盗聴を認めるような発言をした佐藤理八が、次長との電話で態度を急変させ、その後市川執行委員が書記局に来て問いただしてもその態度を変えなかったため、その不実な態度をさらに非難、追及して偶々発せられたものとみるべく、右被告人三名にはその内容の害悪を加うべき明確な意思を有していたものとは到底考えられず、佐藤理八としても、前記文言を告知された後も依然として盗聴を否認する態度をとり続けていたもので、同人に対する影響力も少なかったものと考えられるから、以上によれば、右被告人らの保護しようとする組合に対する信頼やその団結権擁護の法益と、右暴行及び脅迫がなされたために生じた法益侵害とを対比すれば、何ら均衡を失なわないものといえるのであり、前記実質的違法性判断の基準に照らせば、右被告人らの行為は違法性を有するものとは言えないから、右被告人らの行為の違法性は結局阻却されるべきものである。

(その三) 結論

以上のとおり、被告人らに対する本件第一、第二公訴事実はいずれも罪とならないものであるから、刑事訴訟法第三三六条に従い無罪の言渡をすべきこととなる。

よって、主文のとおり判決をする。

(裁判長裁判官 宗哲朗 裁判官 井口博 裁判官豊永多門は転補のため署名押印できない。裁判長裁判官 宗哲朗)

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